僕の「ゾーン」体験。
僕は、目に見えないもの、つまりスピリチュアルな世界があることを信じているけど、いわゆる霊感とか超能力的なものは全く持ち合わせていない。
だから、以前のブログにも書いた、母が亡くなってからしばらくの間続いた不思議な体験以外には、スピリチュアル体験というのはほとんどない。
ただ、今から30年ほど前、中学生のときの出来事で一つ強烈に覚えているのが、いわゆる「ゾーン」とか「フロー」と呼ばれる体験だ。
僕は小学校のときから野球をしていて、中学になっても野球部に入った。
とはいえ、突出して野球が上手なわけでもなくて、中学3年になっても補欠のままだった。
そんな僕がレギュラーになるきっかけとなった試合があって、それが中3の最後の大会の2カ月くらい前。隣の中学校との練習試合だった。
僕はその日も補欠だったので、試合中はバックネットの裏やベンチの後ろでずっと素振りをしていた。
すると、試合の途中で監督(顧問の先生)から声がかかって、代打での出番を告げられた。
それまで試合に出たことはほとんどなかったし、しかも2塁にランナーがいる場面での代打ということで、おそらく僕の緊張は極限まで高まっていたと思う。
打席に入った僕は、その極度の緊張状態のまま相手チームのピッチャーと向き合い、バットを構えた。
とはいえ、地に足がつかないというか、なんとも言いようのないフワフワした感覚だった。
そして、相手ピッチャーがボールを投げた瞬間、周囲の世界がスローモーションになり、何の音も聞こえなくなった。
スローモーションの世界の中、ピッチャーの手を離れたボールはゆっくりと僕の目の前まで来て、そして止まった。(というか止まって見えた。)
僕は、「えっ?」っと思って、何が起きたのかよくわからないまま、ティーバッティングでもするように、その止まったボールめがけてバットをスーッと振り下ろした。
すると、ボールはバットの真芯に当たり、手には何の感触もないままセンター方向への強烈な打球となって飛んでいた。
これはホームランだろうという大きな当たりだったんだけど、たまたま深く守っていた中堅手にキャッチされてしまった。
結局、記録的にはセンターフライだったんだけど、代打でセンター方向に鋭い打球を打ったことで監督に認められて、その日から僕はレギュラーになった。
当時は、その不思議な体験よりもレギュラーになったことのほうが嬉しくて、あまり深くは考えていなかったけれど、今では、あの「ゾーン」体験のほうが記憶に残っている。
それ以降、スポーツをしていて「ゾーン」に入ったことはないけれど、あの日、中学校のグラウンドで、止まったボールにバットを振り下ろした瞬間の光景は時々思い出す。
そして、あの体験があったからこそ僕は、科学的には説明できない不思議な現象や、目に見えない世界、スピリチュアルなことに対する抵抗感が少ないんだろうと思ってる。