操る側の論理。
僕は以前、スマホゲームをつくるベンチャー企業に勤めていたことがある。
とはいえ、クリエイターではないから、直接ゲームづくりに関わっていたわけではないんだけどね。
僕はマーケティングやプロモーションが専門なので、とにかく、できるだけ多くの人にゲームのことを認知してもらって、インストールしてもらって、継続してプレイしてもらって、さらには課金してもらうための方策を考えるのが仕事だった。
そのためにいろんなことを企画して施策を打つんだけど、当然ながら、何となくいい感じの施策をテキトーにやる、というわけじゃない。
売上アップという最大の目的を達成するための指標(KPI)を設定して、その数値を上げるための施策を繰り出していくわけなんだよね。
で、当時僕らのプロジェクトでは「継続率」というのを最優先の指標に設定してた。
継続率っていうのは、簡単に言えば、ゲームをスマホにインストールしてくれたユーザーが、やめることなくずっと継続して遊んでくれている状態を表す数値。
スマホゲームは無料で遊べるものが無数にあって、しかも次々と新作がリリースされるから、多くのユーザーは面白いゲームを求めて次々と新しいものをインストールする。
逆に言えば、ちょっと面白くないと思ったら今やっているゲームをやめて、すぐに別のものに移ってしまうっていうこと。
任天堂やソニーが出しているようなテレビゲーム型のものと違って、スマホゲームの多くは無料でも遊べるから、簡単にインストールしてもらえる一方で、すぐに捨てられちゃうというリスクがあるんだよね。
だから、いかに継続的にプレイしてもらって、そしてそこから課金へとつなげていくかというのが大事だとされていた。
一言で言えば、いかにしてユーザーをゲームに依存させるか?ってことだ。
前置きが長くなっちゃってごめんなさい。
この「継続率」を上げてゲームへの依存度を高めるためには、もちろんゲーム自体が面白いものであることが大事なんだけど、それだけじゃなくて、そのゲームを取り巻く仕組みによっても継続率を上げることができるの。
で、継続率を上げる上で僕が大事だと考えてたキーワードが「競争」「優越」「貢献」。
まず「競争」というのは、ユーザー同士、あるいはユーザーが所属するグループ同士を競わせることで感情を揺さぶり、ゲームへの意欲を喚起するということ。
普通に自分のペースでプレイしたいと思っているユーザーであっても、「競争」を意識させる、つまりユーザー同士を競わせることでゲームに熱中させて、こちら(運営者側)のペースに巻き込むことができる。
2つ目の「優越」は、競争によってランキングをつけたり、順位によって獲得できるアイテムを限定したりすることによって、上位者や強者が優越感を感じられるようにするということ。
いったん優越感を持ったユーザーは、その優越感を維持するためにますますゲームに依存し、課金の額を増やしていくことになる。
一方で、上位者や強者になれず劣等感を抱いたユーザーは、自分も優越感を持てる立場になりたいと思うようになって、ゲームにのめり込んでいく。
そして、3つ目の「貢献」というのは、ゲーム内のコミュニティで奉仕・貢献することによってコミュニティへの依存度を上げること。
スマホゲームでは、“ギルド” と呼ばれるようなグループをつくって、グループ同士を競わせる仕組みを持っているものがあるんだけど、自分が所属するグループが強くなるためにメンバーが貢献するように仕向ける。
そうやって各メンバーがグループに貢献すればするほどグループへの依存度が高まり、グループ内の結束も高まっていくので、ゲームをやめづらくなるんだよね。
「自分がゲームを辞めると、他のメンバーに迷惑をかけちゃうかも…」という気持ちにさせてしまえば大成功だ。
人間が、他者に貢献することに喜びを感じる生き物だということを利用して、ゲームへの依存度を上げるっていうことだ。
もちろん、継続率を上げるために必要なことはほかにもいろいろあるんだけど、当時の僕が特に重視してたのは上の3つかな。
つまり、何が言いたいかっていうと、ゲームの制作者側は、こんな酷いことを考えながらゲームを制作・運営しているんだってこと。
だから、ゲーム中毒者や、“廃課金者” と呼ばれるような人たちが大量生産されることになる。
そして、これはもしかしたらゲームに限ったことではなくて、世の中のいたるところでこういう思惑を持った人間が、僕らを操ってるのかもしれない。
って、かつての自分を棚に上げて言ってるわけだけど。。。(笑)
無駄に競争させて優越感や劣等感を持たせ、必要以上に貢献をさせる。
それによって集団への帰属意識と依存度を高めて、人をコントロールする。
ブラック企業なんかはわかりやすい例だけど、これはブラック企業に限った話じゃない。
地域コミュニティ、部活やサークル、家庭、学校、企業、国家、、、どれもまさにそんな感じじゃないだろうか?
世の中には、僕らをコントロールしようとする思惑が、そこらじゅうにウヨウヨ漂っている。
だからこそ、意識的に「競争」を避け、「優越感や劣等感」から距離を置き、「貢献」することの意味を考えたい。
かつて人を操ろうとしていた僕自身への自戒と反省を込めてそんなことを思うのでした。
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